社内報(まごころこみゅにけーしょん)より

Founderより

●14年7月1日号

ありがとうございます。農業協同組合新聞のインタビュー記事をご紹介します。

地域の旬の食材で物語を作る 堀 富士夫・一般社団法人 日本惣菜協会会長(株式会社デリカスイト代表取締役FOUNDER) 
「食の外部化」がいわれて久しいが、その傾向はこれからますます進む。中心的な存在が「中食」であり、「食のインフラ」として社会的に認知されてきた「惣菜」だといえる。

伸びる惣菜産業
◆市場規模は8兆7000億円2013年推測。(惣菜白書)
高齢社会、女性の就労率のアップ、単身世帯の増加など、ライフスタイルの一段の変化により、また「食のインフラ」として「惣菜産業が高い支持を受け」さらに、「惣菜産業のみなさんが努力され、惣菜専門店やスーパー、コンビニで売られている惣菜が、美味しくて、栄養バランスが考えられ、手軽で、リーズナブルなもの」になり、「調理をする意欲がなくなってきているというよりは、買った方がいいという社会状況になってきているから」。

堀会長はいま3つのテーマを掲げて協会の運営にあたっている。
一つは、「世界に広げよう日本のお惣菜」だ。
「和食」が世界無形文化遺産に登録されたこの機会に、日本の惣菜を海外に広めていきたい。日本のコンビニやスーパーが中国やアジア各国に進出して、寿司や弁当、惣菜が日本と同じように店頭に並べられ売られている。そのためにベンダーも海外に進出することで、「惣菜はどんどん世界に広がっていく」と見ている。
二つ目が「地域を極めよう」だ。
日本の食文化は「地域地域でお米を中心に、生活文化や伝統的なお祭りを含めて成立って」おり、海外と一番違うのは「水を食べる食文化」(小泉武夫氏)と強調する。パンとかナンは乾燥させ水を出すが、「ご飯は、お米とほぼ同量の水を入れて炊き、お米に水を含ませる」からだ。
「四季があって、水が美味しくて安全だという良さが、それぞれの地域にたくさんあるはず、その地域の食材を活かした、地域の惣菜をもっともっと増やしていきたい」と熱く堀会長は語る。
「グローバル化社会」のなかで、地域がどんどん疲弊している。多様な文化をもつ多様な地域を活性化するためには、「地域にある農業を含めた経済主体が、地域の人を使い、農産物などの地域の資源を使い、産業連関を高め再投資力を高める」ことであり、「食とか惣菜は、そうした地域内再投資力を高める経済主体にならなければいけない」と考える。
同じ食関連産業であっても、「巨大資本は、同じサイズの同じ重量の同じカットのものを、大量に生産しなければならない」。そうなると海外の原料も使い、海外で生産するようにならざるを得ない。中小零細な会社が担っている惣菜産業は、巨大資本とは違うもの、地域にあるものをどう活用していくのか、そこにかかっている。国内のそして地域の旬のものに付加価値があると考え、そうした食材を使うことで「地域の物語」を作ることが、「最終的には地域の人たちも楽しいし、安心できる、顔の見える関係になっていく」。
また地域が衰退する中で「家庭内孤独死」など、コミュニケーションの空洞化も進んでいるが、「惣菜屋さんは、高齢者が美味しいものを求めて集う場であり、食という楽しさを共有できる場として活用」できるのではないかと考えている。
三つ目のテーマは「健康に役立とう」だ。
「平均余命と健康寿命には10年くらいの差があり、健康寿命を伸ばすのは、医療もありますが、本来は食」、「食生活をどうするかで、惣菜が大きな働きができるはず」と考える。
調理しない人に作れと「栄養教育」をするよりは、「これは体にいいですよ」とか提案して食べてもらうことが「これからの惣菜産業として大事なこと」ではないか。「健康はわれわれ惣菜産業がもっと考え、担わなければいけない」と提案。「惣菜産業はまだまだ発展していくし、社会的な役割も高くなる」はずだ。
終わりに、農業生産者や農協への希望を聞いた。「これからの時代、中食・惣菜を含めて『食の外部化』はさらに進み、2040年には75%になるという説も。いままで市場出荷したり、大手との契約販売をしてきた農家や農協の人たちには、中食やその中核である惣菜を意識した農産物生産に取組んでほしい」。「その地域の農家と惣菜屋が結びつき、地域力を高めることが大事だ」と指摘した。
そして、惣菜産業にとっても米は大事な食材だが、用途によって求める米は異なるので「一つの品種銘柄に集中するよりも、それぞれのニーズに合ったお米を作ってもらいたい」し、「日本の食文化の基本はお米ですから、これからも大事にしていただきたい」と結んだ。