炉端や焼き肉へみんなでたまに行くようになったのは、いつごろからだろう?
ホリ・マリ?焼肉と寿司が好きな子(寿司は高いから二度くらいしか行っていないが)。
男子のようにさっぱりした性格、女のような女々しさもないけど色気もない。
「鳥居さんに色気見せてもしょうがないじゃん」好きな人の前ではぺらぺら
喋らないところをみると相手しだいで色気を出せたのかも知れない。
「○月○日に一二三会(焼き肉)あるんですけど、鳥居さんも行きません?」
--- 男ばっかじゃなく、女も誘えよ!
「女の子誘うと面倒臭いから」
--- なるほど。でも、誘えよ。
焼き肉屋「一二三」も今は、店名が変わってしまった。
「○○さん誘ってあげるからお寿司ごちそうして!」
--- はい、???、家庭のある男をからかうな。
「一点張・本店だよ」九四年十二月二日、結局誘いに乗って。
--- でも、うまかったよなぁ。
「二次会は私がもちますから」でも目当ての フェーマス(スナック)は開店
していなくて、もう一軒、スナック・ワンスモアで時間潰しし、再び フェーマスに到着。
今までと違ってしおらしい態度、ここのマスターのことがかなり気に入っている様子。
--- 約束通り、ホリ・マリのおごり?
結局、おふくろさんに付けてさよなら。
--- お前、たまには払え!
真理はじめてのホームページ作品「地酒のマルチメディアカタログ」
「上司じゃないから課長、次長って呼ぶ必要ない」いつも、さん付けで呼んで
いたホリ・マリと初めて一緒に仕事をしたのが事故にあう二週間前から。
彼女のいるシステム開発部から助っ人としてマルチメディア事業推進部へ応援に
来てくれた。
「鳥居次長、よろしくお願いします」
--- おっ、どうしたの?
「ハ、ハっ、一応挨拶しておかないと・・・」
『地酒のマルチメディアカタログ』作成のメンバーにアサインし、それまでの事務
処理中心のシステム開発とはまったく違う仕事を一生懸命やり始めたばかりだった。
負けず嫌いの彼女らしく、まわりに聞きながら遅くまで頑張っていた。
--- 仕事なんかより一杯やることあったはずなのに・・・。
「お寿司、また行きましょう」やっと二度目の一点張・本店が九六年二月一日。
ホリ・マリとの最後の会話?
どんな会話をしたのか少し思い出して・・・。
「十日から一週間お休みください。毎年、友達と海外へ旅行しているんです。
今度は○○○」
--- いいとこの子に俺がおごるの?
「まぁまぁ、気にせず」
彼氏の話、「いい人いないんです。私に合うような」
――― 一人紹介してあげたのに。一生いないから見合いでもしろよ。
「四月の人事で マルチに移動かなぁ。・・・マルチはいいんだけど、鳥居さんの
下じゃねぇ!」
--- 相変わらず可愛くないよ。トロは食べないように!
それから、九五年十月に亡くなった吉田常務の思い出話、
「志なかばの悔しさ、これからよい目に会えたのに・・・」
『・・・・・・・・・・・・・』
ホリ・マリを思い出して酒を飲むなんて、夢にも思わなかった。
気が強く、男勝りなホリ・マリ、
でも誰より気の付くやさしい子だったホリ・マリ。
『・・・・・・・・さようなら』
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